教えて!ボランティアガイドさん

【教えてガイドさん】美旗地区の初瀬街道と新田水路を巡る

2021.11.10

こんにちは。「ボランティアガイドおきつも」の松本です。

きょうは、美旗地区のご紹介をさせていただきます。

美旗は、かつて美濃原や小波田野と呼ばれ、古事記や日本書紀にも記述されている天皇の禁猟区としての広い原野があったところです。

この地区には5~6世紀の古墳群をはじめ、室町時代には能楽観世流の元祖観阿弥が創座したとされる福田神社跡、中世では天正伊賀の乱の織田信長ゆかりの滝川氏城跡、また近世になりますと約360年前に開発された新田水路や初瀬街道宿場町の名残をとどめる新田の街並みなど数多くの歴史が残されています。

(写真:美旗古墳群 史跡)

さて、新田水路ですが、承応3年(1654年)藤堂藩の政策として加判奉行であった加納藤左ヱ門直盛は同役の三浦少之介と共に、この原野の開拓を立案し、藩主の藤堂大学頭高次の許可を得て、伊賀地方最大規模の新しい村づくりに着手されました。

新田の地は丘陵にあり近くの川より水を引くことが当時の技術ではできなかったため、滝之原地区と小波田地区にそれぞれ池を築堤することになりました。

かなりの人数を動員し苦労の末、完成した村と水路ですが開墾3年目には185戸の農家で米作りが行われていたようです。

ところがその後の度重なる豪雨のため水害が相次ぎ1675年には大池の欠損により莫大な被害が生じました。

そのため永久に亘る豊富な水を確保するため2次計画として、水源を3里20町(およそ14キロ)先の現在伊賀市高尾の前深瀬川に求め、遠大な水路を難工事の末に、無事完成させました。

この工事は直盛の子、直堅の時代に造られたもので親子二代に亘る苦心の結晶として脈々と伝えられています。

前深瀬川からの水路が新田地区に入りますと水路の補水として青蓮寺ダムからの分水塔があり、そこから各田んぼに水を入れるため高低差をつけた土手となります。勿論、開墾当時からの水路で約2キロ近く流れています。

(写真:青蓮寺ダムより続く水路・分水塔)

田んぼを見ながら水路を散策していただきますと、春には桜並木の花が咲きこぼれ、途中には初瀬街道の常夜燈や愛宕神社の祠もあり、遠くには布引山地や伊賀富士と言われている尼が岳、俱留尊山や鎧岳、兜岳、国見山など美しい山並みを望むことができます。

(写真:新田水路の桜並木)

また、国の史跡に指定されている美旗古墳群の女良塚、毘沙門塚も水路沿いにあり、美波多神社への参道も続き、広い農園ゾーンには向日葵やコスモスが季節によって楽しめます。

(写真:農園のコスモス)

この広大な地にできた新田の田んぼは「ぜり田」と言われ各家の屋敷の裏に設けられており、全国でも数少ない形態で、春の田植えの時期から秋の収穫の頃までまるで短冊の様な田園風景をご覧いただくことができます。

この新田開発によって、初瀬街道もつけられ明治22年頃までは伊勢の国と大和の国を結ぶ心暖かい信仰の道でもありました。

初瀬街道宿場町として賑わっていたころは茶店や旅籠が軒を連ねていたそうです。

かつて、国学者の本居宣長公も吉野への旅でこの新田を通り、菅笠日記で和歌を詠まれ立派な歌碑が美波多神社参道前の街道に立っております。

「糸桜 苦しきたびも忘れけり

立ちよりてみる  花の木陰に」  本居宣長

(写真:本居宣長の歌碑)

「旅」という言葉を美しくかざる枕詞を「草枕」と申しますが、ある時は草を枕とし、ある時は侘しい旅籠の上り口で草鞋のひもを解いた昔の旅を思い浮かべ、、山をかすめる雲のひとひら道端にそよぐ草花のひとつひとつに目をとめていただきながら是非散策なさってみてください。

『ボランティアガイド おきつも』とは・・・

地域(名張)の住民自らが、その地域が持つ豊かな資源について、それぞれ得意の分野で紹介するものです。 プロではありませんが、その「もてなしの心」にあふれた案内はご利用いただいた方々から好評を得ています。

ボランティアガイド「おきつも」 – 三重 なばりの観光ガイド (kankou-nabari.jp)

 

【教えてガイドさん】地蔵院青蓮寺を巡る散策コース

2021.07.20

こんにちは。ボランティアガイドおきつもの諏佐です。

今回は青蓮寺の地名の由来となった地蔵院青蓮寺を巡る散策コースをご紹介します。

165号線から百合が丘方面に進み、道なりに百合が丘の団地を抜けると、多宝山(おたからやま)登り口の石段が見えてきます。その手前には、昔この場所で稼働していた水車が再現されており、木製の水車が回る様子は懐かしい風景です。

山の頂上に地蔵院青蓮寺があるのですが、この階段を上るとお寺の裏から入ることになるので、山を登らずに青蓮寺湖方面となる左に曲がります。ぶどう狩りの受付案内所を過ぎると、カンカン石と呼ばれる道標が見えてきます。道標に小石が当たってカーンと音がお山にコダマしたことからカンカン石と呼ばれるようになりました。

その先の青蓮寺公民館を超えたところで、右に入る道へ進むと国津神社があります。

山の空気がひんやりとして心地良い境内には、推定樹齢三百年の杉と檜が根元で一体化した大木があり、異なる種が根元で融合していることから「縁結び之神様」として祀られています。神社の狛犬は「子取り」「玉取り」で対をなしており、名張では珍しい狛犬です。足で子どもをあやしている「子取り」の狛犬は子孫繁栄の意味があり、「玉取り」の狛犬は玉のように運気が良く転がるようにという意味があります。

国津神社を後にして、その先の二手に分かれた道を右へ行くと「神主坂道入口」の看板が見えてきます。国津神社の神主の住まいが山の上にあり、毎日神社までこの坂を下りて通ったことから、その道を神主坂道と言うようになったそうです。

 

右手の山の上に見える地蔵院青蓮寺まで上っていくと、今の時期はたくさんの蓮の花が出迎えてくれます。2005年に伊賀市野間の慶明寺から蓮の根を譲り受けたのが始まりで、30種類ほどの蓮の花が白やピンクの大輪を咲かせています。

本堂の横を抜け、緑のトンネルとなっている石段を下りると多宝山の公園になり、二手に分かれた小道を左へ行くと、東屋が見えてきます。その左手の青々と木々が茂っている部分は青木城の土塁が残ったもので、天正伊賀の乱のとき織田信長勢と戦うために青蓮寺の地に構えた城のひとつでした。

多宝山の公園では四季折々の植物が見られ、樹木の説明看板を読み観察しながら歩くことができます。石段を下りきると水車の所に出てきて散策は終了となりますが、散策後のお楽しみとして、ぶどう狩りも体験していただければと思います。

7月20日から10月末まで時期に合わせた品種のぶどうを、時間制限なしでゆっくりと味わうことができますので、散策後の一休みとしておすすめです。

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【教えてガイドさん】赤目おすすめ散策コース

2021.06.24

こんにちは。ボランティアガイドおきつもの森本です。

赤目四十八滝渓谷は観光スポットとして有名ですが、今回は赤目口駅から歩いて四十八滝入り口までの散策もぜひ体感していただきたく、ここにご紹介します。

赤目口駅から県道を歩いていくと、約20分で民家が途絶えます。そこからは左手にオオサンショウウオが生息する滝川が流れ、県道の両側の樹木からの木漏れ日がとても美しく(私は「緑のトンネルpart1」と呼んでいます。)真夏でもひんやりとしていて、川のせせらぎを聞きながら気持ちよく歩けます。

 この緑のトンネルpart1を抜けると長坂地区の集落に差し掛かり、いくつかのユニークなカカシが皆さんをお出迎えしてくれます。そこから赤目ハイキングコースとバス道の県道とに別れます。

【どれがカカシ?】

ハイキングコースでは四季折々の植物(緑のトンネルpart2)や、様々
な野鳥の声などを楽しみながら歩いていただけます。
時には鹿と遭遇することも。途中、摩崖仏も探してみてくださいね。

【ハイキングコースの緑のトンネルpart2】

いっぽう、このハイキングコースを選ばず、バス道の県道を歩きますと、途中
特別養護老人ホームの入り口には『日の谷温泉スタンド』があり、温泉を汲ん
で持ち帰ることができます。

【日の谷温泉スタンド】

その温泉スタンドの向かい側には『風穴』があり、手をかざすと真夏でもひんやり
とした空気に自然の神秘を感じることでしょう。この『風穴』は昭和の初め頃まで、蚕種を貯蔵するために自然の冷倉庫として使われていました。

【自然の神秘を感じる風穴】

また、この辺りでは石灰を採取していた名残を見ることができるなど、長坂地区の古の生活を感じていただきながら歩いていただけるでしょう。

6月中旬から7月初旬までは、滝川に沿って続く梅林あたりで蛍が多く飛び交い、毎年多くの人がホタル観賞に訪れます。
ぜひ一年を通して赤目の道を散策して、自然や歴史をたくさん見て体感してくださいね。

 

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